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Channel: 中間報告(青年海外協力隊) –酪農学園大学エクステンションセンター
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青年海外協力隊 現地レポート 千村友輝君/エルサルバドル・青少年活動

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体験記も8号を迎えました。平成24年1月に派遣され、早一年が過ぎようとしています。早いものだとしみじみ思います。

今回はウスルタン県の農牧省水産局で貝の養殖技術の導入と指導を行う専門家と、そこで活動する協力隊員と協力して貝料理コンテストを行ったことについて書きます。

ウスルタンを訪れたのは、青年海外協力隊で派遣された先輩隊員の活動を見学するためです。

村落開発普及員としてこの周辺の村落で活動する先輩隊員は、主に貝の流通販路の拡大と、漁民グループの収入向上のため活動しています。

青年海外協力隊は、色々な職種の隊員が、それぞれの知識や技術を活かしながら多角的に途上国の貧困問題や生活の質の向上のために働いており、それらの職種は200種近くあります。

ボランティア派遣を望んでいる機関や組織が要請書を作成し、現地JICA事務所が調査や協議を行った後、その国の政府が日本政府に派遣要請を行います。

その後、日本でその要請に適した職種や能力を持つ人が選考され、現地へ派遣される仕組みになっているのです。

そのため、他の隊員の生活する環境や活動内容を知る事など隊員間の情報共有は、その国の置かれている状況やニーズを多角的に理解する事に繋がり、とても重要であると考えられます。

発展途上国と一括りで表現しても、それぞれの国が抱える問題や貧困の原因など、それぞれ違うので、そこをしっかり理解した上で、打開策・改善策を考え、アプローチをしないと本当にその国の開発に繋がる貢献はできません。これが国際協力を行う上でとても重要であり難しい側面です。

これらは僕がこの一年間の活動を通して学んだことです。

☆マングローブの森の奥に☆

見渡す限りマングローブが茂る入海。エルサルバドルの東部ウスルタンという地域は、僕が活動するラウニオン県からバスで三時間ほどの所だ。マングローブが与える自然への恵みはとても大きい。道中、珍しい野鳥や昆虫、魚など、豊かな生態系の営みを見ることができる。

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見渡す限りにマングローブが群生するジャングルを、更にボートで進むこと20分。

貝の養殖を行う漁民の多く住む小さな集落に着く。ここはエルサルバドルの中でも経済的に特に貧しい地域である。

☆集落での生活☆

この集落の生活環境はなかなか凄まじかった。吉幾三風に言うならば、

「テレビもねぇ、水も電気もねぇ、車なんか全く走ってねぇ。」のである。
また特に夜が凄い(辛い)。

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日が沈むと、辺りは漆黒の闇に包まれて、まったく何も見えなくなる。暗すぎて何もできないので、「もうふて寝しよう。」と思って、アマカと呼ばれるハンモックに横になると、今度は想像を絶する程の蚊の猛攻に合う。家もなければベッドも無い。柱とトタン屋根の、壁の無い小屋にハンモックを吊るしての、まぎれも無い野宿である。

想像してもらえば苦しさが少し分ってもらえるかと思うが、熱帯気候の蒸し暑い夜に、長そで、長ズボン、靴下の完全防備(蚊対策)で、更にフードを被り、ハンモックで一夜を過ごすのである。日本の巷では、「ハンモックとかオシャレー♪」なんていう意見もあるかもしれないが、それは間違いである。このハンモックもなかなかの曲者で、網の目が荒いせいか、しばらく横になっていると肉がはみ出してきて、その痛みで現実に引き戻される。ハンモックの網の目のせいで、「自分はハムかもしれない・・」とか思いながら周囲を探ると、その環境でも熟睡している先輩隊員。す、すごい・・。

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さすが、二年間の任期の中でこの集落に何度も通い、何泊もしてきただけある。

でも、もっとすごいのは、この環境でずっと暮らしている現地の人達である。どうやって毎日ここで生きているのだろう・・。想像を絶する。 そんなことを考えだすと、余計眠れないまま夜は明けていった。

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マングローブの森の中にある小さな集落。電気も水道もない。経済的にはとても貧しい所だ。しかし、それでも人々の見せる表情は温かく豊かだ。子供たちが、あぜ道を笑顔で走り回り、そんな姿から元気をもらう。経済的な豊かさと、心の豊かさは同じではないのだと、改めて考えさせられる。

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☆貝料理コンテスト!!☆

エルサルバドルのこの地域で養殖されている貝は、コンチャと呼ばれる赤貝の一種、カスコデブロという拳大の巨大な貝、そして日本でもある牡蠣などがある。

この地域の漁民は少しでも現金収入を増やすために貝の養殖を始めたわけであるが、エルサルバドルの貝の消費量がまだまだ少なく、経済的に貧しい状態が続いている。また、収穫に要する時間や労働力の割りに収入が少なく、貝類の販売のみで漁民が生計を立てていくのはとても困難な状態である。

エルサルバドルで採れる貝はとても美味しくて個人的にはよく買って食べるのだが、当地で消費が伸びないのには大きく2つの理由があるように思う。

1) 大衆の貝に対してのイメージがあまり良くないこと。「汚い。お腹を壊す。」など、ネガティブな意見が多い。

2) 貝の調理法が全然普及して無いこと。貝料理を提供するレストランは在るのだが、どこへ行っても似通ったメニューしかない。海鮮料理のレストランでもその状況なので、一般人では貝の開け方すら分からないというのが現状。

貝の消費を増やす方法はないものかと、先輩隊員と頭を悩ました末、企画したのが「貝料理コンテスト」だ。

僕の働くメガテック校(高等専門学校)には調理学科があるので、その生徒80人程に協力してもらい、貝を使った新しい料理の開発を行った。生徒はグループに分かれ、合計15種類の新しい貝料理を開発してもらった。このイベントは一般公開し、再現しやすいようレシピを添えて、その料理を地域住民はじめレストランシェフや食堂経営者に試食してもらった。その他にも、貝の養殖風景の紹介、貝を食べることが貧困地域の開発にも繋がるという考え方の展示、貝殻を使った手作りアクセサリー体験コーナーなど、貝のイメージアップにも繋がるブースも設けた。そして、地域のテレビや新聞でも報道してもらい、より多くのエルサルバドル人が貝を身近に感じてもらえるような工夫を随所に凝らした。

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調理学科の生徒たちの大半は、貝の開け方を知らなかった様で、このイベント準備のために夜遅くまで貝を開けるために悪戦苦闘していたようだった。

この日の最優秀作品は、「貝のパインソース添え」。アイディアが独創的で、貝の味とパインがうまく調和していてとても美味しかった。

優勝を告げたときの生徒たちの嬉しそうな顔は今でも心に焼きついている。

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優勝を喜ぶ学生と最優秀作品

このイベントを通して、エルサルバドルの将来のシェフの卵である学生達に、貝に対しての親しみを感じてもらうこともこのイベントの大きな目標の一つであったので、その目論見は達成できたと思う。

いずれ彼らが立派なシェフになったときには、貝を利用した料理を作ってくれることに期待したい。

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凝ったデコレーションの作品


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